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結論

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目標:

Lumerical FDTDLumerical MODEにおけるブロッホ境界条件(Bloch Boundary Conditions)がどのような時に使用されるか、また、周期境界条件との違いについて説明します。

ブロッホ境界条件は様々な状況で使用されますが、最も一般的な場合では、平面波光源が周期構造に対してある角度をもって照射するシミュレーションの場合に使用されます。

BFAST平面波が用いられる場合はブロッホ境界条件は自動的に無視され、BFASTに組み込まれた境界条件が使用されます。

平面波光源によって照射される周期構造

ブロッホ境界条件は、上のスクリーンショットに示されてるとおり、周期的な構造が平面波光源によって照らされるようなアプリケーションで、周期的境界条件と比較すると理解しやすいと思います。周期的境界条件は、シミュレーション領域の一方の端での電磁場を反対側にコピーします。ブロッホ境界条件は、周期的境界条件と非常に似ていますが、シミュレーション領域の一方の端の電磁場を、反対の端に位相を補正してコピーしています。

この位相補正の必要性は、次の動画のように斜めに伝搬する平面波を考えると理解しやすいです。角度を持って伝搬する場合、一つの周期から次の周期へとなる電磁場が完全な周期的ではなくなり、ある量だけ位相がずれてしまいます。 ブロッホ境界条件はこの位相差を補正します。

角度をもった平面波の伝搬動画

          自由空間で45度の角度をもってZ軸方向に伝搬する平面波の電場Ex

こちらは正しく設定されているシミュレーションです。、45度の角度をもった均一な波面が期待通り観測されます。ブロッホ境界条件は、X方向で使用されています。

X方向に周期境界条件を使用した以外は、上と同一の設定です。これはよくある間違いです。なぜなら、平面波のkxが0ではないからです。同様の間違いは、”set based on source angle”が使用されていない場合にも発生するでしょう。この間違いはシミュレーション境界での散乱として確認できます。

他での利用(バンド構造計算)

ブロッホ境界条件は、面内での波数ベクトル設定が重要な場合にも有用です。例えば、バンド構造計算ではブロッホ境界条件が広く用いられます。

ヒントと追加情報

垂直入射した時の光の伝搬に、ブロッホ境界条件は使えますか?

ブロッホ境界条件は、周期的境界条件の一般的な形態として理解できます。周期的境界条件を使用したシミュレーションは、その境界条件をブロッホ境界条件に置き換えても正しい結果を与えます。この入れ替えを行った場合、ブロッホ境界条件は0度の位相補正を行います。これは、一方の端の電磁場を単純に反対側の端にコピーすることと等価となります。しかしながら、計算コストのセクションで述べるように、ブロッホ境界条件の使用は周期的境界条件と比較してメモリーと時間を余分に必要とします。

計算コスト

ブロッホ境界条件を使用したシミュレーションは、それを使用しなかった場合のシミュレーションと比較して、メモリーと時間が2倍必要です。この増加は、ブロッホ境界条件を使用したシミュレーションが、デフォルトの実数値ではなく複素数値の時間領域場を使用するためです。

複素数値時間領域場を使用した際の影響

  • “計算コスト”のセクションで述べたように、ブロッホ境界条件を使用したシミュレーションは、複素数値時間領域場を使用しています。そのため、計算コストの増大に加え、モニタで収集されるデータの型にも影響を及ぼします。
  • Index monitors: 変化なし
  • Frequency domain field monitors: 変化なし
  • Time domain field monitors: 記録データは実数値ではなく複素数値です。状況によっては、複素数値データは役に立ちます。虚数部分を必要としない場合、単純にモニタデータの実数部を取って下さい。
  • Time domain movie monitors: ‘Intensity’オプションが選択されると、動画は多少異なって見えます。場の各々の振動を見る代わりに、エンベロープだけが確認されます。これは次の例でご理解いただけると思います。

青い線はガウス型パルスによって変調されたsin波を表しています。

緑色の線はこの信号の絶対値|E|の2乗を表しています(次のコードのEx1)。これは実数値場を使ったシミュレーションの’Intensity’動画で見られます。

赤い線はこの信号の複素数値版の|E|^2 を表しています(次のコードのEx2)。 これは複素数値場を使用したシミュレーションの’Intensity’動画で見られます。

# Code to reproduce figure
t=linspace(0,20,1000);
w=10;
Ex1=sin(wt)exp(-(t-10)^2/5);
Ex2=exp(1iwt)*exp(-(t-10)^2/5);
plot(t,real(Ex1),abs(Ex1)^2,abs(Ex2)^2);
legend(“Real Ex”,”|Ex_real_field|^2″,”|Ex_complex_field|^2″);

角度をもった広帯域光源の入射

上で説明されたように、ブロッホ境界条件は、電磁場の位相補正を行っています。これは、Plane waves – Angled injectionのページで説明されているように、広帯域シミュレーションに重要な結論を与えます。
広帯域角度付き入射では、BFAST plane waveの使用を推奨します。

平面波光源を使用した際のブロッホベクトルの自動計算

ブロッホ境界条件と角度をもった平面波を含むシミュレーションを行う場合、下の図に示されているように、“set based on source angle” オプションを使用して下さい。この設定はブロッホ境界条件を使用する場合のみ設定できます。このオプションを使用しない場合、kx, ky, kzをそれぞれ手動で設定しなければなりません。
手動でのブロッホベクトルの設定は、バンド構造シミュレーションでは重要になります。

注意:複数の平面波光源とブロッホ境界条件をシミュレーションで用いる場合、すべての光源の帯域幅と角度が同じである必要があります。そうでない場合、警告が表示されブロッホベクトルは0に設定されます。

半径の大きなリング全体をFDTDなどでシミュレーションすると、計算量が膨大になることがあります。しかしながら、いくつか方法はあります。

varFDTD

Lumerical FDTDの代わりにLumerical MODEのvarFDTDソルバー(参照 )を用いるのが、このような大きなリングをシミュレーションするための一つの方法でしょう。

この2.5次元ソルバーは,2次元計算と同程度の計算負荷で3次元の平板構造を計算することができます。varFDTDを用いたリング共振器のシミュレーション例も用意されています。

この例を用いてシミュレーションを開始する前には、メモリの容量を確認してシミュレーションに必要な計算領域がPCに十分残されているかどうか確認してください。

また、このような大きなリングを解析するのにはシミュレーション時間を長くする必要があることにも注意が必要です。デフォルトの1000fsでは短いでしょう。
しかしながら、さらに大きなリング共振器をシミュレーションしたい場合は、varFDTDを用いるのは最適とはいえません。

Lumerical FDTD, Lumerical FDE, Lumerical INTERCONNECT

さらに大きなリング共振器を扱う場合、FDTDやvarFDTDでは事足りません。その場合、リング共振器デバイスをいくつかの要素に分けてシミュレーションを行い、得られたそれぞれのデータ
をLumerical INTERCONNECTにインポートしてシステムシミュレーションとして扱うのをお勧めします。

Ring resonator by Lumerical FDTD

1- 結合部(Lumerical FDTD)

まず以下のスクリーンショットのように、リング部のシミュレーションを行います。これは、結合領域の散乱行列を得るためのシミュレーションです。

結合部(リング全体よりもずっと小さな領域)のみをシミュレーションしているので、FDTDで十分扱うことができるでしょう。FDTDで結合部が大きい場合は、varFDTDで初期パラメータをある程度最適化し、最終確認としてFDTD法を使用することを検討してもよいかもしれません。

2- 曲げ導波路(FDE)

FDEソルバーを用いて曲げ導波路をシミュレーションします。このシミュレーションでは、実行屈折率や郡屈折率さらには損失などの導波路特性を返すことができます。

3- システムシミュレーション(Lumerical INTERCONNECT)

結合部の散乱行列と各要素の導波路特性が得られれば、それらをLumerical INTERCONNECTにインポートしてシステムシミュレーションを行うことができます。

このシミュレーションは正確であるだけでなく、Lumerical FDTDなどを用いてリング共振器全体を解析するより大幅に時間短縮が可能です(パッシブリングの例をご覧ください)。

リングが変調器である場合、関連する例があります。

Lumerical MODEの2.5 次元バリエーショナル FDTD( VarFDTD)ソルバーは、リッジ導波路を用いたシステムからフォトニック結晶のような複雑な形状のものまで、さまざまな導波路構造における光の伝搬を効率的にシミュレートします。このソルバーは、ビーム伝搬法に比べて光学的に大きな部品の性能を正確に予測することができ、最適化された計算エンジンと相まって、平面集積光学部品や回路の仮想プロトタイピングおよび最適化に適したロバストな導波路設計環境となっています。

背景

FDTD(Finite-Difference Time-Domain)法は、ナノスケールの部品における光の伝搬をシミュレートするための最も汎用的で正確な手法の一つです。しかし、FDTDを 3 次元構造に適用すると、計算量が非常に多くなり大型の集積光学部品を効率的に扱うことが難しくなります。長い距離を伝播する波のシミュレーションにはいくつかの代替手法があります。よく知られている Beam Propagation Method(BPM)は、ゆっくりと変化する包絡線の仮定に基づいており、大きな構造をすばやくシミュレーションできます。ただし、広角での伝搬や屈折率のコントラストが高い部品では精度が低下します。より厳密な固有モード展開法(EME)は双方向の伝搬を扱うのに最適ですが、十分な精度を得るためには多くのモードを必要とするため全方向の伝搬をシミュレートするには非効率的です。 Lumerical MODEのVarFDTDは、従来の伝搬法とは異なり、光軸やデバイスの形状、使用する材料などを一切仮定することなく、平面導波路システムにおける線形および非線形現象を広帯域にモデリングすることができます。平面導波路コンポーネントの場合、VarFDTDは、2D FDTD 法と同等のシミュレーション時間とメモリのみを必要とし、3D FDTD 法に匹敵する精度と汎用性を提供します。固有モードソルバーと双方向固有モード展開(EME)ソルバーとを組み合わせることで、Lumerical MODEは大規模集積光学部品の仮想プロトタイピングに最適なツールとなり、高価で時間のかかる製造試作品の必要性を低減します。

全方位の面内伝搬において、速度と精度の最適なトレードオフを提供するMODE varFDTD

varFDTD ソルバーは、光学的に大きな平面集積光学部品において全方向の光伝搬をシミュレートするのに最適です。この手法では、図1に示すように、垂直導波路構造を材料分散と導波路分散を同時に考慮した実効的な分散材料に変換することで、3次元の問題を実質的な 2 次元の問題に還元します。

垂直スラブモード
図1:垂直スラブモードは3次元の平面形状を2次元の実効的な分散材料のセットに落とし込むために用いられます

現在、varFDTDソルバーで3次元形状を落とし込むには2つのアプローチがあります。

  1. Hammer and Ivanova [1]に基づく変形手順
  2. 相反定理に基づく手順(Snyder and Love [2]に記載)

いずれの場合も、垂直導波路構造でサポートされる異なるスラブモード間のカップリングを無視できることが重要な前提となります。SOIベースのスラブ導波路構造のように、偏波の異なる 2つの垂直モードしかサポートしていない多くのデバイスでは、これは非常に良い仮定となります。このような場合、VarFDTDは2次元FDTDシミュレーションと同等のシミュレーション時間とメモリで3次元FDTDと同等の結果を得ることができます。これにより設計者は多くの設計パラメータを効率的に繰り返し検討することができ、また3D FDTDでは大きすぎて処理できない部品をシミュレートすることも可能になります。

リング共振器の例:3Dの精度を2Dの計算速度で

ここでは、シンプルなリング共振器を使ってLumerical MODEのVarFDTD ソルバーの動作をデモンストレーションします。

リング共振器
図2: 4ポートのリング共振器

Lumerical MODEは、3D形状を実効的な材料の2Dセットへと自動的に落とし込みます。生成された実効的な材料も分散性をもちます。分散は元の材料の特性とスラブ導波路の形状の両方に由来することに注意してください。その後、生成された材料はANSYS社独自の Multi- Coefficient Materials モデルを用いて、FDTDアルゴリズムによるシミュレーションに適した形にフィットされます。

垂直スラブのモードプロファイル
図3: (左)導波路分散は垂直スラブのモードプロファイルに見られます(垂直方向の寸法z と波長の関数として示されています) (右)生成された実効的な材料にはスラブ導波路の形状による導波路分散とシリコンの材料分散の両方が含まれています

実質的な2Dの材料が生成されると、Ansys社の最適化された計算アクセレーターを使用して2D FDTDシミュレーションを進めることができます。これにより、マルチコアのプロセッサやマルチノードのハイパフォーマンスコンピューティングシステム上での並列計算が可能になります。

実効的2D材料を用いた 2DFDTD シミュレーション
図4: 実効的2D材料を用いた 2DFDTD シミュレーションでは時間領域における1 回のシミュレーションで広帯域の応答が得られます

内蔵された固有モード展開モニターを用いると、任意の導波路モードへの高分解かつ高精度な広帯域透過データが一度のシミュレーションで得られます。スルーポート位置の基本モードへと伝送された信号を図5に示します。表1に示されるように、
VarFDTDは 3D FDTDの結果と非常によく一致し、100倍高速であることがわかります。また、図5では2D FDTD(ここでの屈折率は単に垂直スラブモードの実効屈折率になります)と 3D FDTDを比較していますが、その一致は不十分であることがわかります。特に、このようなシミュレーションで通常抽出される重要な量である帯域幅とFSR(フリースペクトルレンジ)は、VarFDTD では非常に正確に計算されますが、標準的な 2D FDTDではそうはなりません。VarFDTD、2D FDTD、および3D FDTDの比較を容易にするため、図 5 の両方の図では、VarFDTD および 2D FDTD の透過スペクトルの中央ピークが 3D FDTD の結果と一致するようにシフトされています。現実にはこのピークの正確な位置調整は熱的なチューニングによって実現できます。

VarFDTD シミュレーションと 3D FDTD シミュレーションで得られたスルーポート
図 5:(左) VarFDTD シミュレーションと 3D FDTD シミュレーションで得られたスルーポートにおける基本モードへの透過率 (右)標準的な2次元FDTD近似と3次元FDTDから得られた結果を示したグラフ
シミュレーション・タイプメモリ2010 年モデルの Intel Core i7 マシンでの処理時間
2D FDTD15MB約12秒
2.5D FDTD18MB約15秒
3D FDTD338MB約150 秒
表1 :リング共振器の例で必要なシミュレーション時間とメモリのまとめ。この場合、2D FDTD および VarFDTD は3D FDTD の約 100 倍の速度で実行されます

VarFDTD ソルバーで得られる計算の精度と速度に基づけば、Lumerical MODEを用いるとリング共振器の最適化を大きく前進させることができます。またリング共振器やその他のシリコンフォトニックデバイスのシミュレーションでは、通常、より大きなシミュレーション領域と長いシミュレーション時間が必要となるため、VarFDTD ソルバーはこのレベルの複雑さの設計を最適化するのに非常に重要な役割を果たします。

幅広いアプリケーションに対応できる汎用性をもつvarFDTD

平面テーパー:

VarFDTDソルバーを用いると、広いテーパーが有する複数のモードへの広帯域伝送を正確に決定することが簡単にできます。垂直構造を実効的なスラブへと落としこむ方法はテーパーのような広い領域では完全にうまく機能するため、導波路スラブ内の光の伝搬に対する近似は行われず、このバリエーショナルFDTD処理で3D FDTDに非常に近い結果を得ること
ができます。

SOI導波路テーパーのVarFDTDシミュレーション
図6: SOI導波路テーパーのVarFDTDシミュレーション。テーパーの形状はw(x)=[α(L-x)
]^m+w_2 でパラメータ化し,Lumerical MODEに搭載されている最適化フレームワークを用いて最適化されています。
偶数TE モードへの透過率
図7:波長 1550nmにおける導波路2の最初の5つの偶数TE モードへの透過率を示しています。

アレイ型導波路グレーティング(AWG):

AWG は光ネットワークにおける高密度な波長分割多重化に不可欠なデバイスです。これらデバイスのサイズと複雑さおよび位相誤差に対する感度は、多くの伝搬法にとってAWGを(計算)困難なものにする可能性があります。Lumerical MODEの VarFDTD ソルバーを使えば、1 回のシミュレーションで正確な広帯域の結果を得ることができます。

 VarFDTDソルバーを使用してシミュレートした AWGの出力スターカプラで、波長に依存した分波の様子が見られます
図8: VarFDTDソルバーを使用してシミュレートした AWGの出力スターカプラで、波長に依存した分波の様子が見られます。これらの結果はすべて時間領域での1回のシミュレーションから得られたものです。

非線形導波路:

導波路の非線形効果をシミュレートするには、長いシミュレーション時間と伝搬距離が必要になることがよくあります。VarFDTDソルバーとLumerical MODEが提供するflexible material pluginsとを組み合わせることで、線形効果と非線形効果の相互作用を正確に捉えながら、長距離の波動伝播を効率的にシミュレートすることができます。Flexible material pluginsはオープンなフレームワークで構築されています。そしてエンドユーザーは独自のニーズに合わせたモデルをネイティブの C/C++/FORTRAN で書く動的リンクライブラリ・プラグインとして開発することができます。これらのプラグインは、多係数材料モデルと組み合わせて使用することで、図9に示すような複雑な非線形材料をシミュレートすることができます。

非線形リング共振器における4光波混合(FWM)
図9: 非線形リング共振器における4光波混合(FWM)の 2.5 次元 FDTD シミュレーション(左)スルーとドロップの出力 (右)ポンプ光、信号光、変換光を示すスペクトル

結論

Lumerical MODEの VarFDTD ソルバーは、導波路部品における広帯域/全方向光伝搬をシミュレートするための汎用ソルバーです。異なるスラブモード間の結合が無視できる平面形状の場合、VarFDTD は2D FDTDのシミュレーション時間とメモリのみで、3D FDTD に匹敵する結果を得ることができます。Lumerical MODEの固有モードソルバーおよび双方向固有モード展開(EME)ソルバーを組み合わせることで、Lumerical MODEは大規模集積光学部品の仮想プロトタイピングに最適なツールとなり、高価で時間のかかる製造試作品の必要性を低減します。

参考文献

[1] Manfred Hammer and Olena V. Ivanova, MESA Institute for Nanotechnology, University of Twente, Enschede, The Netherlands “Effective index approximation of photonic crystal slabs: a 2-to-1-D assessment”, Optical and Quantum Electronics ,Volume 41, Number 4, 267-283, DOI: 10.1007/s11082-009-9349-3.
[2] Allan W. Snyder and John D. Love, Optical Waveguide Theory. Chapman & Hall, London, England, 1983.

光集積回路(PIC:Photonic Integrated Circuit)デバイスの特徴であるサブ波長ナノ構造と大型デバイス形状の組み合わせは、シミュレーションツールにとって深刻な問題であり、設計者は精度と計算時間の間で望ましくないトレードオフを迫られることがよくある。広帯域、双方向、または無指向性の伝搬が必要な場合も、さらなる課題となる。この記事では、複数の光学ソルバーを組み合わせてこれらの課題に対処する方法を紹介する。

背景

PICデバイスには様々な形状やサイズがあり、一つのソルバーですべてのPIC設計を最適に扱えないのが現状である。信頼性の高い効率的なバーチャル・プロトタイピングを実現するためには、初期のコンセプトからプロトタイピング、製造前の最終検証までの設計プロセスにおいて、複数のソルバーを組み合わせて使用するのが望ましい。

複数のソルバーをワークフローに沿って組み合わせることで、設計者は開発の各段階で重要な設計目標に集中し、設計時間と計算リソースを最も効率的に利用できる。

1. 初期シミュレーションモデル
デザインの目標:

  • 基本機能

シミュレーションの必要性:

  • 迅速で粗いジオメトリ/パラメータ調整

推奨ソルバー:

  • 固有モード解析、ビーム伝搬固有モード展開、2D FDTD

2. 初期最適化
デザインの目標:

  • キーパラメータに近いデザイン

シミュレーションの必要性:

  • 迅速、中程度の精度
  • 複数回の実行でパラメータ空間を狭める

推奨ソルバー:

  • 固有モード展開、2D/3D FDTD

3. 最終的な最適化と検証
デザインの目標:

  • デザインの正確な検証

シミュレーションの必要性::

  • 高精度
  • 最小限の繰り返し

推奨ソルバー:

  • 固有モード展開、3 次元 FDTD

表 1:プロトタイプから製造可能な状態までのコンポーネント設計のワークフロー

最初のステップは、初期のシミュレーションモデルを設定することである。この段階で使用されるソルバーは、一般的に探索される設計空間が広いため、きちんとした定性的な洞察を得られるように、いくつかの近似値を含んでいる。この段階では、多くの反復処理を迅速に行うために、シミュレーションの精度が犠牲になることがある。また近似計算には、3D モデルではなく 2D モデルを使用したり、シミュレーションメッシュを粗くしたり、ソルバーのアルゴリズムをより厳密ではないものにしたりすることがある。機能するシミュレーションモデルが確立されると、設計の最適化を進めることができる。最適化には多くのシミュレーションを行う必要があるため、2 段階に分けて行うのが効率的な方法である。最初の最適化段階では、パラメータ空間を大幅に絞り込み、近似的な最適化状態に到達することが目的である。この段階で使用するソルバーは、高速に動作しながらも適度に正確な結果を出し、正しいトレンドを予測できるものでなければならない。このワークフローの最後のステップは、最終的な最適化と検証である。この段階では、シミュレーションモデルが最適化され、必要に応じてデザインを製作できる状態になっている必要がある。この段階で必要なシミュレーションの回数は最小限に抑え、シミュレーションごとの計算コストが高くても、最も精度の高いソルバーを使用する必要がある。

集積された光学部品のための光学ソルバー

Ansys Lumerical では、統合された光学部品の解析を正確かつ効率的に行うために、複数の光学ソルバーをサポートしている。また任意の断面を持つ導波路やファイバのモード解析は、有限差分固有モード(FDE)ソルバーでサポートされている。さらに、横方向や縦方向に変化する形状の伝搬解析は、有限差分時間領域法FDTD: Finite Difference Time Domain Method ) または固有モード展開法EME: Eigenmode Expansion)を用いて行うことができる。
集積された光学部品における光の伝搬をシミュレーションするには、ビーム伝搬法(BPM:Beam Propagation Method)などの他の手法を用いることもできる。BPMは、緩やかに変化する包絡線近似(Slowly Varying Envelope Approximation)に依存しており、BPMの標準的実装は、不連続形状、大きな伝搬角、高屈折率コントラストの材料を正確にモデル化するには信頼性に欠けることが多い[1]。この記事では、
FDTD法EME法に焦点を当てる。この2つの方法は、誤差の原因がよく理解されており、結果が正しい解に収束するマクスウェル方程式の数値解を提供している。

FDTD法

FDTD 法は、任意の幾何学的複雑さを持つナノスケールの部品における光の伝搬をシミュレートするための、最も汎用的で正確な手法の 1 つだ。FDTD は並列化によって非常によく拡張され、1 回のシミュレーションだけで広帯域の結果を効率的に得ることができる。また平面形状の場合、2.5D variational FDTD (varFDTD) 法は、3D FDTD に代わる優れた手法であり、2D FDTD と同等の計算時間で 3D FDTD に匹敵する精度を達成することができる。varFDTD 法は、特に初期の最適化段階で有用であり、近似的な最適化状態に到達するための非常に効率的な方法を提供する[2]。
FDTD 法では、曲面を立方体メッシュで離散化することで生じる階段状の効果が大きな課題となっている。また時間領域法では、広帯域の波長領域で分散性のある材料を扱うことが困難な場合がある。しかし Ansys
Lumerical FDTD の実装は、これらの課題を解決する。例えば、多係数モデルを使用して、任意の分散を持つ広帯域材料をシミュレーションすることができる。また、コンフォーマルメッシュとグレーデッドメッシュを使用することで、精度を犠牲にすることなく、使用するグリッドセルの数を減らすことができる。

EME法

双方向EME法は、導波路やファイバデバイスの長距離伝搬をシミュレートするためのよく知られた手法である。
特に、マルチモード干渉計やグレーティングのように断面が一様な導波路やファイバデバイスは、伝搬距離が長くても
FDTD法ほど計算コストはそれほどかからない、という利点がある。
EMEは、1回のシミュレーションですべてのモードと偏波を含むため、受動部品のS行列を完全に抽出するための非常に効率的な手法である。
しかし、この周波数領域法のデメリットは、各周波数の結果を得るために1回のシミュレーションが必要なことだ。
基本的なEME法では、伝搬方向に沿った幾何学的な変化や材料の変化を解決するために、連続的に変化する構造を階段状に近似することが必要である。
Ansys
LumericalのEME法の実装では、基本的なEMEアルゴリズムに、CVCS(Continuous Varying Cross-Sectional sub-cell)法、効率的なマルチスレッド化、並列化などの拡張機能を加えることで、これらの課題のいくつかに対処することができる。

FDTD 法と EME法 の性能比較

FDTD法は計算量の多い方法である。大規模なPIC部品の場合、多数のグリッドセルが必要となり、シミュレーション時間とメモリの必要量が大きくなることがある。

これらの課題は、高度に最適化された計算エンジンと効率的な並列化によって、ある程度解決することができる。しかし、コンポーネントの形状が 1つ以上の次元で波長の 100 倍を超えるような 3D シミュレーションでは、少なくとも解析の一部に別のアルゴリズムを検討することが望ましい場合がある。

EME法は、長距離の光の伝播をシミュレーションするのに適した手法だが、デバイスのサイズが横方向に大きくなった場合や、伝播軸に対して伝播角度が非常に大きくなった場合には、FDTDに比べて計算時間やメモリのスケールが小さくなる。

FDTD法EME法の性能を比較する際には、シミュレーション時間とデバイスサイズの拡大縮小が重要な要素となる。さらに、周期構造の処理効率、使用可能な並列化の度合い、時間領域と周波数領域のシミュレーションのトレードオフ、FDTDグリッドの分散の影響などの他の要因も、ソルバーの性能に大きな影響を与える可能性がある。以下の例に示すように、これらのトレードオフは、特定のアプリケーションによって大きく異なる。

応用例

この例ではグレーティングカプラとテーパースポットサイズ変換器について,FDTD 法 EME 法の性能を比較する。
シミュレーションは、標準的な 4 プロセッサ、32 コアのワークステーションで行う。この比較では、設計ワークフローの 3 つのステージ(初期モデル、初期最適化、最終最適化と検証)すべてを見ていく。

グレーティングカプラ

グレーティングカプラは、ファイバからの光をフォトニックチップに出入りさせるために使用される。そのためには、垂直方向に面外伝搬する光が必要である。また導波路スプリッターの場合と同様に、グレーティングカプラの性能を評価するためには、完全な S パラメータマトリクスが必要である。例えば、入力と出力の回折格子カプラのペアの間では、しばしば後方反射によってファブリ・ペロー振動が発生する。
FDTD は伝搬方向を仮定しないため、グレーティングカプラのような 3 次元散乱問題に非常に適している。また、FDTD には、1 回のシミュレーションだけで広帯域の動作を計算できるというメリットもある。EME は本質的に双方向であり、より多くのモードを使用することで大きな角度での光の伝搬をシミュレートすることができるが、その代償としてシミュレーション時間と必要なメモリが増加する。S パラメータを抽出するために、FDTD では、インカップリング構成とアウトカップリング構成の 2 つのシミュレーションが必要になる。2D のグレーティングカプラの応答を計算する場合、2D FDTD では 2 回のシミュレーションで約 10 秒、2D EME では 1 つの波長で約 30 秒となり、FDTD ではなく EME を選択するメリットはなくなる。

サイズ 40mm×20mm×2.5mm の 3 次元回折格子カプラの場合、FDTD の総シミュレーション時間は約 36 分となる。

グレーティングカプラLumerical 2D FDTDluemrical 2D EME
シミュレーション領域サイズ30μm×3.8μm30μm×3.8μm
1 波長分のS を抽出する時間10 秒(2 回のシミュレーション)30s
100 波長のS を抽出する時間10 秒(2 回のシミュレーション)3000s
表 2:グレーティングカプラのシミュレーション性能比較
  • 感想 :FDTD法 EME法 よりもグレーティングカプラに適しており、特に広帯域のシミュレーションに適している。初期のシミュレーションモデルは、2D または 3D FDTD法で構築ができる。最適化と検証は 3D FDTD法 で行うべきである。

テーパースポットサイズ変換器

スポットサイズコンバータの形状は参考文献[2]に基づいており,シングルモードのシリコン導波路からより大きなポリマー導波路に光を変更するためにテーパーが使用されている。多くのテーパー設計と同様、目的は、最小の損失でこの変換を行うことができる最短のテーパー長を見つけることである。
連続的に変化する形状の場合、EMEはデバイスの長さをスキャンするのに最適で、長さごとに完全な計算を繰り返す必要がない。FDTD法では、テーパーの長さごとに個別のシミュレーションが必要となり、テーパーの長さの二乗に比例してシミュレーション時間が長くなってしまう。図4は、5μmから200μmまでのテーパーの長さに対する透過率の変化を示している。
EMEでは100種類のテーパー長に対する結果が2分以内に得られたのに対し、FDTDシミュレーションでは11種類のテーパー長に対して6時間以上かかっている。

Taper transmission
図4:EMEソルバーと3次元FDTDを用いて計算した[2]のスポットサイズコンバータの透過率の比較
  • 感想 :初期のシミュレーションモデルには、短いテーパーに対して3次元FDTDを使用し、EMEの結果が正しいかどうかを検証することができる。テーパー長の最適化は、EMEを用いて行うべきである。

Ansys Lumerical ソルバーの概要

Ansys 社は、あらゆる受動部品に適した汎用性の高い包括的な設計環境を提供しており、フォトニック・コンポーネントやシステムの設計者は、正確な設計のために効率的なワークフローを導入することができる。下の表は、Ansys Lumerical FDTD とAnsys Lumerical MODE で利用可能なソルバの概要である。

固有モード解析
ソルバー Ansysツール
FDE 有限要素法による固有モードソルバー Lumerical MODE
伝搬解析
ソルバー Ansysツール
FDTD 2D/3D Finite Difference Time Domain Lumerical FDTD
varFDTD 2.5 次元変分法 FDTD Lumerical MODE
EME 双方向の固有モード展開 Lumerical MODE

表 3:MODEとFDTDは、同じCAD 環境、ジオメトリ、解析ツールを使用して、異なるソルバを選択して実行できるため、ユーザーは設計プロセスを容易に効率化することができる

LightBridgeについて

LightBridgeは、光学・フォトニクスデバイスおよびシステム設計のためのAnsys LumericalZemaxソフトウェアソリューションに加え、ソフトウェアを効果的に使用するためのプロフェッショナルサービス(テクニカルセミナー、エンドユーザートレーニング、テクニカルサポート、ソフトウェアの統合や設計・解析のためのアプリケーション固有のモジュールの作成に関する開発など)及びフォトニックIC作製サービスを提供しています。

光技術の専門家集団である合同会社LightBridgeは、独自の技術力とノウハウを持っており、お客様のニーズに合わせた最適なソリューションを提供することができます。光技術やフォトニクス分野でのソリューションをお探しの方には、合同会社LightBridgeが魅力的な選択肢であることは間違いありません。
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結論

集積された光学部品には様々な形状やサイズがあり、1 つのシミュレーションアルゴリズムですべての種類の部品を最適にモデリングすることはできない。しかし同じコンポーネントでも、初期シミュレーションモデル、初期最適化、最終最適化の各段階で、複数のツールを組み合わせて使用することで、設計プロセスが効率化され、ワークフローがより効果的になることがよくある。

  1. C. L. Xu and W. P. Huang, “Finite difference beam propagation method for guided-wave optics”, PIER, 11, 1-49, 1995
  2. Y. Ma, et al., “Ultralow loss single layer submicron silicon waveguide crossing for SOI optical interconnect”, Optics Express, Vol. 21, No. 24, 2013

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