ANSYS LUMERICAL

Lumerical FDTD:広帯域・任意形状のナノフォトニクスデバイス解析

時間領域差分法により、Maxwell 方程式を数値的に解きます。伝搬方向や角度を限定する近似を置かないため、後方反射や多重反射を含む三次元的な振る舞いをそのまま扱えます。

3D FDTDGPUGDSII日本語サポート

Lumerical FDTD の解析画面。CMOSイメージセンサのマイクロレンズ構造をレイアウト表示し、スクリプトエディタと並べています

FDTD とは

Maxwell 方程式を直接、時間領域で解く

解析空間を格子に分割し、電界と磁界を時間ステップごとに交互に更新していきます。幅広い構造形状に適用でき、材料の分散性や異方性もモデル化できるため、ナノフォトニクスデバイスの解析で最も汎用性の高い手法とされています。

時間領域で計算するため、広帯域のパルスを一度入射させてフーリエ変換すれば、単一の計算から波長範囲全体の応答が得られます。共振器の Q 値やフィルタの透過スペクトルを設計する場面で効きます。

一方で、計算量はセル数と時間ステップ数の積で増えます。解析領域が波長に対して大きい場合や、微細メッシュ、長い減衰時間、分散材料を必要とする場合は、計算時間とメモリ使用量が大きくなります。対象に応じて、同じ Lumerical FDTD 製品に含まれる RCWA・STACK や、別製品の Lumerical MODE が備える FDE・EME・varFDTD といったソルバーとの使い分けが重要です。

FDTD法の空間離散化に使うYeeセル。直交格子の各稜に電界成分、各面に磁界成分を配置する構成を示しています

FDTD の利点

FDTD がもたらす3つの利点

01

フルウェーブ解析

伝搬方向や角度を限定する近似を置かず、Maxwell 方程式を時間領域で数値的に解きます。解析精度はメッシュ、時間ステップ、材料モデル、境界条件などに依存します。後方散乱、多重反射、全方向への回折をそのまま含みます。

02

広帯域

広帯域パルスと周波数領域モニタを使うことで、多くの場合、一度のシミュレーションから複数波長の応答を取得できます。周期構造への斜入射などでは、BFAST や波長・角度スイープが必要になる場合があります。

03

GPU 実行

2023 R2 以降、対応する NVIDIA GPU を利用した 3D FDTD 解析に対応しています。単一 GPU、マルチ GPU および対応環境での分散実行が可能ですが、材料モデル、境界条件、GPU 仕様、ライセンスおよび使用可能な SM 数に制約があります。設定方法は版によって変わるため、ご利用のバージョンの対応要件をご確認ください。

FDTD解析による負屈折率率媒質の電磁界分布。界面で入射ビームが通常とは逆向きに屈折する様子を示しています

使いどころ

FDTD が向く場合と、向かない場合

汎用性が高いぶん、他の手法のほうが速く正確に解ける場面もあります。以下は選択の目安です。

FDTD を使う

  • 構造の特徴的な寸法が波長と同程度、またはそれ以下
  • 形状が任意で、周期性も伝搬方向の一様性も仮定できない
  • 広い波長範囲のスペクトル特性を一度に知りたい
  • 後方散乱や多重反射を含めて評価する必要がある
  • 共振器の Q 値、フィルタ応答、グレーティングカプラの効率
  • 遠方界パターンや放射効率を求めたい

別の手法を検討する

  • 構造が厳密に周期的で回折効率だけが必要 → RCWA
  • 導波路のモードを知りたい → MODE (FDE) または Multiphysics (FEEM)
  • 長距離の導波路伝搬や、主な伝搬方向が明確な構造を解析する → MODE (EME / varFDTD)
  • 多層膜の反射率スペクトルだけが必要 → STACK
  • 複雑な曲面や、非構造メッシュが有利な形状を扱う → DGTD
  • PIC 全体やリンク性能を見たい → INTERCONNECT

周期構造では RCWA が一般に高速で、非周期構造やより汎用的な解析には FDTD が適しています。

代表的な用途

どの分野で使われているか

グレーティングカプラの FDTD 解析

シリコンフォトニクス

グレーティングカプラ、方向性結合器、リング共振器、MMI の特性評価

ソリューションを見る

メタレンズの位相マップ

メタレンズ・メタサーフェス

メタアトム単体の応答検証、局所的な集光性能の確認

ソリューションを見る

CMOSイメージセンサのセンサ特性解析結果。ベイヤー配列の重み関数と、各色画素の外部量子効率の角度・波長依存性を示しています

イメージセンサ

マイクロレンズとカラーフィルタを含む画素構造の光学効率、混色

LiDARアンテナのFDTD解析結果。3次元の遠方界放射パターンを角度座標上に示しています

LiDAR・光センシング

アンテナ素子の放射パターン、OPA の素子設計

ソリューションを見る

共振型バイオセンサグレーティングのFDTD解析モデル。グレーティング断面と、光源および反射・透過モニタの配置を示しています

バイオセンサ

SPR 構造、導波路型センサの感度最大化

ソリューションを見る

Micro-LEDのFDTD解析結果。素子構造と、そこから放射される遠方界の強度分布を示しています

発光デバイス

LED・OLED の光取り出し効率、微小共振器の放射制御

入力と出力

何を与えると、何が得られるか

設定した構造、材料、光源、境界条件に対して、電磁界分布、透過・反射・吸収スペクトル、S パラメータ、遠方界などを求めます。

INPUT

何を用意すればよいか

ジオメトリ組み込みプリミティブ、GDSII インポート、STL・STEP インポート、スクリプトによるパラメトリック生成
材料実測 n, k データのフィッティング、分散モデル、異方性材料、非線形材料
光源平面波、ガウシアン、モード光源、双極子、TFSF、インポートしたフィールド
境界条件PML、周期、ブロッホ、対称・反対称、Metal
メッシュ自動生成に加え、領域指定のメッシュ細分化、conformal mesh
モニタ周波数領域、時間領域、遠方界投影、動画出力

FDTD

時間領域差分法

OUTPUT

何が得られるか

スペクトル透過率、反射率、吸収率の波長依存性
S パラメータポート間の振幅・位相を含む S パラメータ。INTERCONNECT 用の回路モデルや CML 作成に利用できます(コンパイル済み CML の生成には CML Compiler が必要です)
電磁界分布断面・体積の E, H 分布、ポインティングベクトル、強度分布
遠方界放射パターン、指向性、開口数に対する集光効率
共振特性共振波長、Q 値、モード体積
連携用データ周波数領域モニタのビーム状電磁界を ZBF 形式で OpticStudio へ受け渡し。強く閉じ込められた近接場では遠方界変換などが必要です。CHARGE・HEAT へは光吸収分布を渡します

解析ワークフロー

実際の進めかた

収束確認を省くと、結果の妥当性が判断できません。手順の中で最も時間を使うべきなのは 03 です。

01

構造と材料を定義する

GDSII や CAD からの取り込み、または寸法をパラメータとして定義します。あわせて、対象波長範囲で材料モデルの実測データへのフィッティング誤差を確認します。ここがずれると以降がすべて狂います。

02

光源・境界・モニタを設定する

対称性が使える場合は対称・反対称境界で計算量を大きく減らせます。

03

収束を確認する

メッシュ、シミュレーション時間、PML 層数、解析領域サイズを変えて、結果が動かなくなることを確認します。

04

パラメータスイープ・最適化を行う

寸法を振って設計空間を把握します。HPC やクラウドでの並列実行に対応しています。

05

結果を受け渡す

S パラメータを INTERCONNECT へ、吸収分布を CHARGE・HEAT へ、ビームを Zemax へ。

よくあるご質問

FDTD についてよくいただく質問

導入前によくいただく質問をまとめました。

構造が周期的で、回折効率や位相を波長・角度・偏光ごとに評価する場合は RCWA が適しています。有限サイズの効果、局所的な欠陥、周期性のない任意形状を扱う場合は FDTD が適しています。メタサーフェス設計では、RCWA でメタアトムライブラリを生成し、必要に応じて FDTD で局所的・有限サイズの効果を検証する使い分けが可能です。

メッシュ精度、メッシュオーバーライド、PML 層数、構造と PML の距離などを変化させ、評価したい結果が十分に収束していることを確認します。また、シミュレーション時間や auto shutoff の設定が結果に影響していないことも確認します。

まず材料モデルとフィッティング、メッシュ、PML などの境界条件を確認します。原因を特定できない場合は、モデルを簡略化し、電磁界分布を確認しながら問題箇所を切り分けます。

対応しています。FDTD では対応する NVIDIA GPU を使用して 3D シミュレーションを高速化できます。利用可能な GPU、ライセンス、対応機能にはバージョンごとの要件・制限がありますので、導入前にご相談ください。

解析規模によって異なりますが、特に RAM 容量とメモリ帯域が重要です。大規模解析では、十分な RAM と高いメモリ帯域を備えた CPU 環境、必要に応じて対応 GPU を推奨します。想定する解析内容に合わせて構成をご案内します。

日本語サポートとトレーニング

解析設定、収束、境界条件の選び方まで相談できます。FDTD と MODE を実際に操作するハンズオン形式のトレーニングも用意しています。

ご相談前にお知らせいただけると助かること

  • 対象波長と材料
  • デバイス構造とおおよその寸法
  • 評価したい特性と目標値
  • 既存の解析データや測定結果の有無
  • 想定しているスケジュール

お伝えいただけない情報があっても構いません。差し支えのない範囲で結構です。

解きたい構造で、実際に動かしてみてください

デモでは、お客様の対象に近い構造を題材にします。計算規模と所要時間の目安もその場でお伝えできます。